2004年06月02日
電磁的公正証書原本不実記録
最近話題になっている丸石自転車のお話。昨日警視庁は、丸石自転車の架空増資で前社長らを電磁的公正証書原本不実記録の疑いで逮捕しました。このお話、この業界にいない一般の方には分かりにくいのでちょっとだけ解説します。
まず架空増資とは何でしょう?ここでいう増資は新株発行の事です。このケースでは株主以外の特定の第3者に対して新株(450万株)を割り当て新株を発行しました。1株61円で発行したので、61円×450万株=2億7450万円が出資金となります。本当に払いこまれたのであれば何の問題もない通常の増資です。
ところがこの事件では株式の割当先である松嶺会が福祉関連会社から借りた2億7450万円を出資金として銀行に払込み、銀行から株式払込金保管証明書(登記で必要になります。)が発行された後に、この出資金を福祉関連会社に返却しています。本来資本金となるべき出資金が会社に残らず、書類上は資本金が増えた形式になります。「見せ金」という手口です。この状態の会社と取引するのは非常に危険といえる訳です。
じゃあ電磁的公正証書原本不実記録って何でしょうか?
この事件では、この手口で銀行に発行してもらった株式払込金保管証明書を使って、登記してしまったので、実体と違う内容(不実の内容)を登記簿(公正証書原本)に記載したことになります。
昔は登記簿は手書きのもの(旧ブック庁)でしたから、公正証書原本不実記載罪という罪名でしたが、今はコンピューター庁ですから、虚偽の登記を申請すると電磁的公正証書原本不実記録罪と今風の呼び名になっています。
この件、司法書士が登記したかどうかは分かりませんが、実際自分の身の回りで起こったら、たまらないと思います。だからといって見せ金を防ぐ具体的な手立てもありません。「お客サン、これ見せ金ですか?」って、いちいちお客を疑う訳にはいきませんからね。