2004年07月20日
後見人の仕事
3連休中にあったお話です。(あくまでもフィクションです。以下の記述は事実と異なる部分があります。)今回は長い話ですが、本当に面白い話ではないので、興味ない人は読み飛ばして欲しいと思います。
毎月月初めは成年後見の日という話で何度か過去に説明させて頂いた事があったかと思いますが、司法書士の通常の登記以外の仕事に成年後見という分野があります。リーガル・サポートの法人後見委員会などの話も過去にしておりますので、私がこの分野のお仕事をやっているのはご承知だと思います。
先週よりの風邪で体調がいまいちの私は、この3連休で体を休めるつもりでした。そんな連休初日のことです。1本の電話がかかってきました。
「もしもし、鈴木さん(仮名)の後見人の原田さんですか?こちら警備会社○○○○の○○です。」
「はい、原田ですけれど。」警備会社からの電話でしたので、なんだろうと思いました。
「実は鈴木さんがご自宅でお亡くなりになりました。」
「えっ?。。。」
「鈴木さんがご自宅でお亡くなりになりました。」
(まさか。。。)あまりに急なことに頭の中は真っ白になりました。鈴木さんとは、2週間程前にもお会いしたばっかりです。
聞くと警備システムが作動したので、自宅に出向いた所、倒れている鈴木さんを発見したそうです。私が鈴木さんの緊急連絡先になっていたので、すぐに私のところに電話したとのことです。
「すぐ行きます。」そう言って電話を切りました。
頭の中はまだ真っ白です。この連休は風邪なのでゆっくり休養するとかは、もはやどうでもいい話です。混乱しながら、慌てて着替えて出かけました。現場に到着すると数台のパトカーが停車していました。
何度かお伺いした鈴木さんのご自宅の玄関には、たくさんの靴が乱雑にありました。警察の方が大勢います。
「鈴木さんの後見人の司法書士の原田です。」
「ああ、助かりました。」先頭で指揮を取っていた警察の方が、私を見てそう言いました。
現場のことは、あまり書きたくないので省略させてもらいます。
(2週間程前にも会ったばっかりなのに。2週間程前はお元気だったのに。)そんな言葉が頭の中をグルグル回ります。ついこの間までお元気だったこと。後見人として自分はちゃんと仕事ができていたのか。十分に鈴木さんのことをみてやれていたのか。もっと色々やれたんじゃないのか。頭の中をグルグル言葉が飛び交います。
1年以上のお付き合いです。親戚のおじさんよりも、ずっと会ったりしていた関係です。数日間最後の仕事のつもりで、バタバタしてました。緊張していたのか、混乱していたのか、不思議と悲しくありませんでした。一番始めに後見契約した時に、いずれはこの人とも別れる日が来るのだろうとは思っていました。仕事上でのお付き合いなので、葬儀に出ても涙なんか流さないのかなあ。と思っていました。
(中略)ずいぶんと時間だけが経過しました。
やっと落ち着いたので、お線香をあげさせてもらいました。
手を合わせながら「鈴木さん、こんな俺で良かったですか?こんな俺で良かったですか?」と何度も問いかけていました。
職業としての後見人。商売としての後見人。死に直面しても涙も流さず、淡々と仕事をする後見人。
でも、日誌を書いて、こうやって、落ち着いて思い出すと、突然悲しみが湧きあがってきます。こういう業務は私には向かないのかもしれません。
鈴木さんのご冥福をお祈りします。ゆっくり休んで下さい。