遺言とは・・・
法律用語として用いられる「遺言」は、一般的に考えられている「最後の言葉」のようなものではなく、「自分の死後に、自分の望む身分上・財産上の法的効果を発生させるために行う意思表示」を意味します。 つまり、遺言を行った人は、自分の死後に法的効果を伴う自分の最終の意思の実現を図ることができるようになります。
遺言は厳格な様式行為ですので、遺言に法的効力をもたせるためには、必ず一定の方式に従って作成しなければなりません。
その方式に違反すると無効になり、法定相続が開始することになります(法定相続が開始すると、民法が定めた相続人に、民法の定めに従って身分上・財産上の法的効果が発生することになります)。
通常の場合に行われる遺言の方式は普通方式と呼ばれ、以下の3種類の方式があります。
自筆証書遺言
<要件> 自分で以下のものを書き、押印する。
(1)遺言の内容の全文 (2)日付 (3)氏名
公正証書遺言
<要件>
(1)証人2人以上の立会いのもとで、(2)遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、(3)公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させ、
(4)遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自が署名押印し、(5)公証人がその証書は方式に従って作成したものである旨を付記してこれに署名押印する
秘密証書遺言
<要件>
(1)遺言者がその証書に署名押印し、(2)遺言者がその証書に封をして証書に用いた印章でこれに封印し、(3)遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述し、
(4)公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印する
遺言書には、何でも記載すること自体は可能です(例えば家族への感謝の気持ちを書く等)。しかし、法的効力を生じさせることができる事項は法律で定められている一定の事項に限られているので(例えば法律が認めていない財産の処分方法を記載しても効力は生じません。)、記載の可否と効力発生の有無は分けて考える必要があります。 また、遺言は厳格な様式行為ですので、様式を満たしていない場合には、満たしていれば生じるはずだった効力も生じなくなってしまいます。
法で定められた遺言事項には、例えば以下のような事項があります。
(1) 推定相続人の廃除及び廃除の取消
(2) 相続分の指定及び指定の委託
(3) 遺産分割の指定及び指定の委託又は遺産分割の禁止
(4) 相続人が数人ある場合の担保責任の指定
(5) 遺留分減殺方法の指定
(6) 遺贈
(7) 財団法人設立のための寄付行為
(8) 認知
(9) 未成年後見人、未成年後見監督人の指定
(10) 遺言執行者の指定及び指定の委託
特定の者に財産を残したい場合
(例えば、配偶者のみに財産を相続させたい、配偶者には債務を承継させたくない、自分の世話をしてくれた子供に財産を相続させたい、内縁の妻又は夫との間にできた子に財産を相続させたい、障害のある子に財産を相続させたい、事業を承継する相続人に事業用財産を相続させたい、事実上の離婚状態にある配偶者に相続させたくない、疎遠となっている兄弟姉妹に相続させたくないなど)や、推定相続人に財産を相続させたくない場合、遺言書の作成により、財産配分の指定をすることができます。
他には、
認知をしたい子がいる、遺産分割を禁止したい、遺言執行者を指定する
老妻の老後の世話をすることを負担として財産を与えたい場合
などにも、遺言書が作成されます。
また、残された遺族が遺産分割協議で争うことにならないためにも、遺言書を作成することをおすすめします。
実務上用いられる遺言の方式は、その殆んどが公正証書遺言です。
なぜかと言うと、自筆証書遺言や秘密証書遺言の弱点となる部分をほとんどカバーしているからです。自筆証書遺言や秘密証書遺言では、せっかく書いた遺言書が発見されないなどの不利益があります。秘密証書遺言の場合は、遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、遺言の内容を誰にも知らせず秘密にできますが、公証人は、その遺言書の内容を確認することはできません。よって、自筆証書遺言や秘密証書遺言を用いた場合、遺言書の内容に法律的な不備があったり、紛争の種になったり、無効となってしまう危険性があります。
また、自筆証書遺言や秘密証書遺言では、遺言書を発見した者が家庭裁判所に届け出て、検認手続を受けなければなりません。 公正証書の場合、公証役場に遺言者が百歳になるまで保管されるので、安心です。蛇足ですが、百歳を超えても連絡すれば保管してもらえるようです。
公正証書遺言では、遺言執行者(遺言を実現してくれる人、法律家が選ばれる事が殆どです。)を選任することが多いので、その人に連絡してもらいます。公正証書遺言の作成を依頼される場合、遺言の文案は弊社が練りますし、公証人も内容を確認してくれますから、法律に詳しくない素人の方でも安心です。自筆証書のように、訂正に失敗して無効になるということもありません。
また家庭裁判所の検認手続がいりませんから、時間手間費用がかかりません。 自筆証書がいいと考えられる方もいらっしゃると思いますが、遺言は厳格な様式行為ですので、遺言の内容を確実に実現させるためにも公正証書遺言をお薦め致します。
遺言公正証書の作成手数料は、遺言により相続または遺贈する財産の価額を目的価額として計算します。 遺言は、相続人・受遺者ごとに別々の法律行為となります。したがって、各相続人・各受遺者ごとに、相続させる、または遺贈する財産の価額によりそれぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。
ただし、手数料令19条は、遺言加算という特別の手数料を定めており、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1,000円を加算すると規定しています。
また、祭祀の主宰者の指定は、相続又は遺贈とは別個の法律行為であり、かつ、目的価格が算定できないので、その手数料は1万1,000円となります。
作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管しますが、保管のための手数料は不要です。
【法律行為に係る証書作成の手数料】
(目的の価額) | (手数料) |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17,000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23,000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29,000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3,000円に5000万円までごとに1万3,000円を加算 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5,000円に5000万円までごとに1万1,000円を加算 |
10億円を超える場合 | 24万9,000円に5000万円までごとに8,000円を加算 |
遺言書作成の司法書士報酬は、標準的なケースで下記のような費用になります。正確なお見積りは、案件全体を把握してからでないとご案内できませんので、ご了承下さい。
(財産の価額) | (報酬) |
5000万円以下 | 10万円 |
5000万円を超え1億円以下 | 15万円 |
1億円以上 | 20万円 |
遺言は厳格な様式行為ですので、遺言に法的効力をもたせるためには、必ず一定の方式に従って作成しなければなりません。
Q1 中学生は遺言をすることができる。 答えは×。厳密に言うと15歳の誕生日を迎えた中3は遺言できます(民法第962条)。未成年でも15歳であればいい訳です。現実にはなさそうです。
Q2 夫婦そろって連名の遺言ができる。 答えは×。共同遺言は禁止されています(民法第975条)。遺言は後日自由に撤回できるのが原則です。共同でしてしまうと、片方が自由に変更できなくなりますから、認められません。
Q3 遺言書の日付が平成15年4月吉日とある遺言書は有効である。 答えは×。これを認めない判例があります。遺言は後日自由に撤回できるのが原則ですから、正確にいつその遺言が作成されたかが大切です。平成15年4月の遺言がもう1通でてきたらどっちが後日作成したものかわからず困りますよね。一般常識だとよさそうですけど、こんな理由で×です。
Q4 遺言者の名前が芸名(ペンネーム)のものは無効である。 答えは×。例えば杉本高文でなくて「明石家さんま」で有効な遺言となります。誰が遺言したというのがわかればいいんですね。もちろん自分しか知らない、ごく少数しかわからないペンネームでは無効になるんじゃないでしょうか。「氏名の自書とは遺言者が何人であるかにつき疑いのない程度の表示があれば足り、…」という判例もあります。一般常識だとダメそうですけど、有効です。
相続人が揉めないための遺言。かえってトラブルになるような遺言の作成は止めておきましょう。